
加齢とともに身体機能や生理機能が低下し、健康障害に陥りやすくなってしまうと、フレイルと呼ばれる状態になる可能性があります。皆さんはフレイルという言葉をご存知でしょうか?今回は、誰でもなる可能性があるフレイルについて説明していきます。
はじめに
年齢を重ねるにつれて運動機能や生理機能が徐々に低下していく事は、皆さんご存知の通りかと思います。機能の低下から健康障害に陥ってしまう状態をフレイル(虚弱)といいます。
類似した意味合いの用語でサルコぺニアという言葉がありますが、これは身体的フレイルの一要因といわれており、歩くスピードが落ちる、握力が弱くなるなどの状態をいいます。
高齢者の食欲低下に気づかずそのまま過ごせば体重は減少し、やがて栄養状態の低下を招きます。低栄養状態が長引くとサルコぺニアになりやすく、活動量の低下とともに筋力が低下し転びやすくなったり、骨折しやすくなります。このような悪循環をフレイルサイクルと呼びます。フレイルの予防では、この悪循環を断ち切ることがとても大切です。
フレイルは予防対策をきちんと取り組むことで健康な状態に近づけることが可能です。フレイルをよくご理解いただき、よりよい日常生活を送っていただければと思います。
フレイルとは?
フレイル(虚弱)とは、加齢に伴って心と体の働きが弱くなってきた状態をいいます。
最近、自分のお体の状態に下記のような心当たりはありませんか?
・体重が減った(一年に4~5kg)
・疲れやすくなった
・筋力の低下(階段を昇るのがつらい)
・歩くのが遅くなった
・活動性の低下(最近家から出なくなった)
該当する項目が多ければ多いほど要注意な状態に陥っている可能性が高くなります。
フレイルは要介護に影響する!?
年齢を重ね、さまざまな病気や不活発な生活習慣、入れ歯が合わないなどの口腔機能の低下、低栄養などが要因でだんだんと健康な状態から要介護の状態に移行していってしまいます。
フレイルは、いわば健康な状態と要介護状態の中間です。
・健康 → プレフレイル(前虚弱) → フレイル → 要介護
フレイルへの移行は必ずしも要介護への一方的な進行ではなく、可逆性(回復性)があると言われており、フレイル予防は重要です。
フレイルの兆候をチェックしてみよう!
それではここで、フレイル兆候のチェックをしてみましょう。
この記事を読んでいるあなたもさっそく兆候がないか、Yes・Noでチェックしてみてください!
- ほぼ同じ年齢の同性と比較して、健康に気を付けた食事を心がけている
- 野菜料理と主菜(肉か魚)を、両方とも毎日2回以上は食べている
- 「さきいか」「たくあん」くらいの硬さの食品を、普通に噛み切れる
- お茶や汁物でむせることがある
- 1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施している
- 日常生活において歩行または同等の身体活動を、1日1時間以上実施している
- ほぼ同じ年齢の同性と比較して、歩く速度が速いと思う
- 昨年と比べて外出の回数が減った
- 1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしている
- 自分が活気にあふれていると思う
- 何よりもまず、物忘れが気になる
チェック項目で日頃の心がけや出来ていないことが多ければ多いほどフレイルのリスクが高まると言われています。
あわせて知っておきたい知識、サルコぺニアについて!
サルコぺニアとは、加齢に伴って筋肉量と筋肉が低下することです。
サルコぺニアはギリシャ語でサルコ(筋肉)ぺニア(減少)の造語です。筋肉量が低下したサルコぺニアの割合は65歳以上で、男性35.4%、女性23.0%といった調査結果があります。
サルコぺニアの原因
・加齢
サルコぺニアに関する要因
・エネルギーやたんぱく質などの食事摂取不足
・身体活動量の低下
・さまざまな疾患の影響
サルコぺニアはフレイルの要素のひとつ。筋肉量を維持することがサルコぺニアやフレイルの予防になります。
筋肉量をチェックしてみよう!
簡単に筋肉量が低下していないかをチェックする方法として、「指輪っかテスト」があります。利き足ではない方のふくらはぎをチェックします。
両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太いところを囲みます。これで、筋肉の減少がないかをチェックできます!
指輪っかでふくらはぎを囲んだ時どうなりますか?
- 指がとどかず囲めない
- ちょうど手内におさまり囲める
- 少しまたは指数本分のすきまができる
すきまができる方はサルコぺニア(筋肉量の減少)の可能性が考えられます。
フレイルを予防するには?
1.1日3食バランスの良い食事
主食:ご飯、パン、麺などの炭水化物はエネルギー源になります。
目安:ご飯の場合、1日3杯
主菜:肉、魚、卵、大豆、大豆製品はタンパク質を多く含み、筋肉や体を作る材料となります。
目安:1日3皿
1皿の目安は薄切りの肉3枚(80g)
魚の切り身1切れ
卵1個
豆腐1/3丁
副菜:野菜やきのこ、海藻は食物繊維やビタミン、ミネラルを多く含み、体の調子を整えます。
目安:1日5皿
・食事のポイント
- 肉、魚、卵などの良質のタンパク質を積極的にとりましょう。
筋肉量、筋肉の低下を予防するには、特にタンパク質の摂取が大きくかかわります。
- 牛乳、乳製品でカルシウムやビタミンDを補給しましょう。
丈夫な骨への材料や筋肉の合成を促します。
2.たっぷりウォーキングや筋力トレーニングをする
ウォーキング、水泳、体操など、無理のない範囲で日常生活に運動を取り入れて、筋力や筋肉量の低下を防ぎましょう。運動後の水分補給も忘れずに!
3.社会とのつながりを大切に
お友達と食事をしたり、地域のボランティア活動に参加するなど自分に合った活動を見つけましょう。
フレイルは予防できるといわれています。家族やお友達との時間をつくり、楽しく、元気に予防に取り組み続けることができれば良いですね!
運動に取り組むときには!
運動をする時には、普段に比べて必要なエネルギー量が増えます。
例)50kgの方が1時間のウォーキング → 160kcal消費
フレイルの要因であるサルコぺニアを有する方でも、タンパク質(BBCA、ロイシン)と筋力トレーニングを併用することで、筋肉量の増大や筋力向上の効果が数多く報告されています。
エネルギーやたんぱく質を十分に摂り、フレイル予防に取り組みましょう。
BBCA、ロイシンとは?
BBCAは主に、骨格筋で筋のタンパクの合成促進、分解抑制、活動時のエネルギー源に関与するアミノ酸で、体内では合成されないため食品から摂取する必要があります。
その中でも特にロイシンは、タンパク質の合成を刺激するアミノ酸であるといわれています。
運動、筋トレ時の栄養素の働き
・タンパク質
運動は筋タンパク質合成を促進
↓
運動直後にタンパク質を摂取
↓
筋タンパク合成が増強
・糖質
運動中はグリコーゲンを消費(グリコーゲンは筋肉に貯蔵しているエネルギー源です)
↓
運動直後に糖質を摂取
↓
グリコーゲンの貯蔵量が増加
運動をする時に必要な栄養素が含まれた栄養補助食品も上手に活用しましょう!
BMIをご存知ですか?
BMI(Body muss index)とは、身長と体重から求められる、体格の判定方法です。BMI=22の時が標準的な体重で、病気になりにくい状態であるとされています。
ご自身のBMIを確認してみましょう!
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
例)160㎝、55kgの場合
55kg ÷ (1.6m×1.6m)=21.4 ・・・となります。
判定基準
低体重(やせ):18.5未満
標準 :18.5~24.9
肥満 :25以上
まとめ
いかがでしたか?
加齢とともに日頃から運動を維持していくことの大切さや栄養に気を付けながら日常生活を送ることの大切さが、私も日を増すごとに感じるようになりました。BMIも一つの指標として参考にしていただき、これを機に今後の生活習慣を見直す機会にしていただければと思います。