
インターネットやテレビなど、メディアでもよく耳にするようになった脳卒中。昔から知られている恐ろしい病ではありますが、今や国民病とも言われるほどメジャーであり、誰もが罹患する可能性があります。また、その発症を回避できるかどうかは、今後のあなたの生活や行動にかかっているといっても過言ではありません。知っているようで知らない、脳卒中の恐怖の実態と今日からできる予防法について分かりやすく解説していきます!
脳卒中(脳血管障害・脳血管疾患)とは?
現在、日本の死因としても上位で知られる脳卒中。
日本の厚労省では、脳血管疾患と分類されています。
現在、日本国の死因上位5位といえば・・・
1位、悪性新生物(腫瘍)
2位、心疾患
3位、老衰
4位、脳血管疾患(脳卒中)
5位、肺炎 となっています。
では脳卒中とはいったいどんな障害なのでしょうか?
はじめに簡単に分類すると3種類あり、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。
それぞれ、
・脳の血管が動脈硬化や心臓からの血栓によって閉塞する脳梗塞
・高血圧などが原因で脳動脈が脆くなって破綻し、脳内血腫をつくる脳出血
・脳動脈の分かれ目に瘤(瘤(りゅう):こぶのようなもの)ができ、徐々に大きくなって破裂する、くも膜下出血(脳動脈瘤破裂:のうどうみゃくりゅうはれつ)
という病態であり、これらの病気を総称して脳卒中といいます、噛み砕きながら説明していきます。
ちなみに、なぜ脳卒中というのか・・・脳卒中という言葉の意味は、
「卒然として悪しき風に中(あ)たる」という言葉から、そう呼ばれるようになったようです。
意味としては、今まで元気だった人が突然倒れて動けなくなり、人事不省に陥る状態のことをいいます。
また脳卒中の発症率としては、脳梗塞が全体の65%、脳出血は21%、くも膜下出血は13%を占める割合となっており、現在高齢化が進む日本では、脳卒中の増加が大きな社会問題になっています。
1.脳梗塞とは?その種類について
脳梗塞は、脳細胞へ血液を送る血管がつまってしまい、脳細胞が死んでしまう病気です。血管がつまる原因は様々で、脳の血管が徐々に細くなってつまったり、血栓(血のかたまり)が流れてきて突然つまることもあります。脳梗塞の3種類を説明していきます。
1)ラクナ梗塞(ラクナとは:小さな空洞という意味)
脳の深部の極めて細い血管が多発性につまる、日本人に多いタイプで小さな梗塞が多発することが多く、無症状の微小梗塞(手足の麻痺症状などがなく無症候性脳梗塞という)も多いようです。
また高齢者に多く、症状は比較的ゆっくり進行します。意識がなくなることはなく夜間や早朝に発症し、気付いたら手足のしびれや運動障害、呂律(ろれつ)不良などで病院に来られる方が多いようです。
進行の仕方は通常ゆっくりで、段階的に悪化していきます。多発しなければ、比較的軽症な場合が多いです。
2)アテローム血栓性脳梗塞(アテロームとは粥状硬化:じゅくじょうこうか、という意味)
→粥状に変形する血管の変性のことを意味する。
高血圧や糖尿病などの動脈硬化の因子と最も関連深い(太い血管がつまる)。
脳内の比較的太い動脈や頸動脈の動脈硬化が進行し、血栓を形成してつまらせたり、血栓が血管の壁からはがれ、流れていって脳内深部の血管をつまらせてしまうことによって起こる脳梗塞。
発症時の症状は比較的軽い場合が多いが進行性に悪化する場合があります。
高血圧、高脂血症、糖尿病などの動脈硬化の危険因子をたくさん持っている人に起こりやすい脳梗塞です。
また、このタイプは発症の前触れであるTIA(一過性脳虚血発作)を生じていることが多いとされています。アテロームの硬化が進み、血管の狭窄(きょうさく)率が高くなるほど、脳梗塞を発症する危険性が高まります。
3)心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)
心臓などから血栓などの栓子(せんし)が流れてきて脳の血管でつまる病態。心房細動などの不整脈や心臓弁膜症などが原因となり、心臓病を持っている方に多いようです。
特に高齢者では心房細動に起因する発症は増加しています。心臓は正常な拍動を示すときには血栓はできませんが心房細動が生じると血栓が形成されやすくなります。
(メカニズム:多くの場合、心房細動そのものが命に関わることはないが、心房が細かく震えることによって心房内の血流によどみができ、血栓を生じ、脳梗塞の原因となるところが問題とされている)。
心臓内にできた血栓は、一旦心臓から出ると血流の多い脳へ向かう頸動脈や椎骨動脈へと流れ込みやすく、それが脳内の太い血管をつまらせるため、急激に意識障害などの重篤な症状が出現することが多く、死に至ることもあります。
また、閉塞させていた血栓がしばらくしてから溶けて流れ出すことがあります。この場合症状は一時的に回復することもあります。
しかしそれ以降の血管で、すでに脳梗塞が完成されているところに再び血栓が流れ出すと出血を生じます。これを出血性梗塞といい、稀に大きな出血となり神経症状が急激に変化することもあります。
頻度は、ラクナが31%、アテロームが33%、心原性が28%、その他の脳梗塞が8%とされています。(※上記はおおよその歴代統計であり、最新の情報ではありません)
2.脳出血とは?その種類について
脳出血(脳内出血)とは、脳内の血管が何らかの原因で破綻を起こし、脳実質内に出血をきたす疾患です。
脳内に出血したことにより形成された血のかたまりを血腫といい、この血腫が大きい場合には頭蓋内圧(とうがいないあつ:ずがいこつ内の圧力のこと)が上昇し、頭痛、嘔気、意識障害が起こります。
脳内出血の60%は高血圧が原因で脳血管に血管壊死(えし)がおこり、微小血管がやぶれて出血を起こすといわれています。
高血圧性脳出血は、どの血管が出血するかによって症状が異なります。
高血圧性脳内出血の危険因子としては、男性であることや肝機能障害があります。また血小板の少ない方や抗血栓・血小板薬を内服(薬をのんでいること)している場合には出血が大きくなり、重篤化する傾向にあるようです。
3.くも膜下出血とは?
動脈の壁がふくらみ、瘤(こぶ)をつくることがあります。脳のすきまにできるので、ほとんどの場合は破裂するまで症状がありません。喫煙や高血圧が原因と考えられています。
瘤が破裂すると脳に重い障害をきたし、半数以上が死亡するか介護が必要となるといわれています。しかし破れる確率や破れやすさ、破れたあとの症状等には個人差があります。
確率には年齢や性別、高血圧の有無、瘤のサイズ、部位、形状などが関係し、治療方針を考える目安となります。小さい瘤でも、細い血管にできた場合は破裂しやすい傾向があります。
上記で説明した3つの脳卒中は、いずれも高血圧が最大の原因となるようです。
リスクファクター:動脈硬化、高血圧、糖尿病、血液透析など起床時や入浴、起立時など血圧が大きく変化するときも発症するリスクがあります。
もともと脳の血管に奇形があって破裂しやすい状態であるところに出血が起こることもあるようです。
脳卒中の予防法とは?
まずは、簡潔に予防法について紹介したいと思います!
1.30代を過ぎたら血圧を知りコントロールする心がけをしましょう。
2.40代から脳ドック、脳の健康状態を把握するようにしましょう。
3.塩分や脂肪控えめの食事とコレステロールを減らす心がけをしましょう。
4.もし現状高血圧があるなら、高血圧を治しましょう。
5.糖尿病は放置しないようにしましょう。
6.喫煙は控えるよう努力しましょう。
7.アルコール飲みすぎは毒、控えめは薬!
8.不整脈は放置せず受診するようにしましょう。
9.太りすぎは万病の引き金になるので注意しましょう。
10.自分の体力に見合った運動を継続しましょう。
11.仕事を忘れて楽しめる趣味を持ちましょう。
12.脳卒中?疑うときはすぐに病院へ。
その他の危険因子について
脳出血は生活習慣病のひとつです。高血圧、心疾患、糖尿病、喫煙、大量飲酒などの危険因子となります。高脂血症は動脈硬化の原因となりますが、コレステロールが低すぎると逆に脳出血の危険因子となるといわれています。
季節ごとの影響では、脳出血は冬に多く夏に少ない傾向があり、温度変化も影響します。寒い季節に急に熱い風呂に入るのはよくありません。また生活習慣病は長い間に起こってくるものですので、若いうちから健康に留意した生活を心がけることが必要です。
心臓の病気で抗凝固剤(ワーファリン)などを飲んでいる人や腎臓が悪く人工透析をしている人、重度の肝臓病、血液の病気で出血傾向にある人も脳出血が起こりやすくなる傾向にあります。
脳出血では、片麻痺等の脳出血特有の症状は保存的加療でも外科的治療でも後遺することが多いです。なのでリハビリテーションが最も重要となります。またリハビリテーションは可能な限り早期から行うことが、より良い予後生活を送ることに繋がるといわれています。
脳卒中を発症した方の特徴(比較的重度の障がいの場合)長く寝ていると手や足が固くなってしまう拘縮が発生してしまいますので、手足の関節を動かします。また手にはタオルなどを握らせ、ベッドでは手や足の位置も大切です(※細かくは別の頁で紹介していきます)。
リハビリテーションは家に帰ってからも必要です。入院加療中に担当セラピスト(リハビリテーションの先生)の方にご指導を頂き、家族も一緒に覚えることが重要となります。
退院後の生活では、屋内は歩くが屋外は車いす、という方も多くおられます。
時間はかかりますが、希望を持って焦らず、リハビリテーションに取り組んで下さい。
最後に、脳出血の人は一時うつ状態のようになってしまい、落ち込むことが多くありますが、徐々にご自身の現状(身体状況)を受け止めるようになります。
家族の方も焦らずに、あたたかく見守ってあげることも大切です。