
起床時に気づく首の痛み。寝違えてしまった・・・朝から気分が下がる・・・。誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか?今回は、なぜ寝違えが起きてしまうのか?その対処法や早く治す方法があるのか?など深堀り解説していきたいと思います!
朝起きて、首が痛い!?まわせない!?
朝起きてみると突然、首が痛くてまわせない、動かせない。このような症状は通称、寝違えと呼ばれており、またの名を急性疼痛性頚部拘縮(きゅうせいとうつうせい、けいぶこうしゅく)とも言われているようです。一度寝違えてしまうと数日痛みが続くこともあるため日常生活や仕事にも支障がでてしまい、たいへん辛いものです。
寝違えは、その痛みの出方から不安になることもあると思いますが、骨の異常ではありません。簡単にいうと不自然な姿勢で寝ていたり、寝具が合っていない、著しく疲労がたまっているなどの要因から首に無理な負担がかかるために起きてしまう症状です。
首周辺の筋肉が軽度の肉離れを起こしている状態と説明する方もおられます。首から肩にかけての筋肉や靭帯などに急性の炎症が起き、痛みや運動制限が生じると考えられていますのでX線などの精密検査を受けても首の骨に異常がみつかることは、ほとんどありません。それでは原因や対策を細かく見ていきましょう!
考えられる寝違えの原因とは?
睡眠をとるとき人間の頭部は、肩幅や首に対して正中位(真ん中の位置)にあることが望ましいですが、睡眠中は寝相などによってその位置からずれてしまうこともしばしば。長時間にわたって首が斜め方向に曲がったままになっていると、首の筋肉が部分的な阻血状態(血液の供給不足)になり、筋肉も凝り固まりやすくなります(しこりとなっている)。
また、前日などに、いつもはしないスポーツや労働をして一部の筋肉が痙攣している(こむら返り)、頸椎の後ろの関節(椎間関節・関節包)に炎症が起きてしまっている。そのような状態から起床時に急に頭首を動かすことにより寝違えが発生するといわれています。
運動を始めるときにストレッチをせず急に激しい運動をしたら筋肉を傷めてしまいますよね?それと同じで睡眠中にコリ固まった筋肉を急に動かすと、肉離れが起きてしまうのです。つまり寝違えは寝ているときに生じるわけではなく、寝違えの原因は睡眠中に作られますが、寝違えの炎症が発生するのは起床時だということです。
原因を簡単にまとめると・・・
・睡眠中不自然な姿勢が続いたために一部の筋肉へ血液の供給が不足し、しこりとなる。
・前日などにいつもはしない運動や動作をして一部の筋肉が痙攣している。
・同じ姿勢の持続(飲酒後の睡眠、疲労が蓄積した状態の睡眠、長時間のパソコン作業、寝具が首の形に合っていない)など・・・。
寝違えとなった原因が何によるものか、を考えて改善策をとっていきましょう!
傷めている部位はどこなのか?
実は寝違えにも種類があります。筋膜(きんまく)を傷めているケースと、中心部分を傷めているケースです。
首を右に回したときに左側が痛ければ、筋膜(筋肉の表面を覆う膜)が傷ついている可能性が高く、反対に首を右に回したときに右側が痛ければ、筋肉の中心部分が傷ついている疑いがあるようです。また、前者の方が痛みはより強く、治りにくい傾向があるといわれています。
寝違えのなかには、神経痛や捻挫のケースも
ご紹介したとおり、寝違えの多くの原因は炎症や肉離れの状態ですが、まれに頸椎(けいつい)に神経痛や捻挫(ねんざ)が発症している場合があります。
神経痛の場合
神経痛とは、末梢(まっしょう)神経が圧迫されることで、痛みやしびれ・まひが生じる状態です。不自然な姿勢で寝ていたことで頸椎周辺の神経が圧迫され、神経痛になることがあります。首から肩や腕、手指に痛みやしびれがある場合は、神経痛が疑われます。
捻挫の場合
ねんざとは、関節の靭帯(じんたい)や腱(けん)、軟骨(なんこつ)などが傷つくケガのこと。睡眠時に頭が極端にのけぞった状態になっていると、頸椎が捻挫することがあります。
一般的な治療方法とは?
動かすと首が痛いので、寝違えが起こった時には痛い方向には動かさずに、まずは首を安静にすることが第一です。通常は数日程度で徐々に痛みは和らいでいきます。重度の寝違えになると、起きていることができないほどの痛みが出る場合もあります。寝違いは自己判断で改善しようとすると、より悪化したり症状が長引くこともあります。
痛みが出てから48時間程度は、消炎鎮痛(しょうえんちんつう)成分が入っている冷湿布を痛い部分に貼るのが有効とされています。鎮痛消炎薬や筋弛緩薬(きんしかんやく)の内服も有効でしょう。筋肉のけいれんが原因の場合には、こむら返りの治療で使う漢方薬が有効なこともあり、痛い筋肉や筋膜に局所麻酔薬を注射する方法が有効な場合もあります。
いずれにしても、薬物治療を検討するのであれば効果を見ながら治療方法を考えていく必要がありますので、整形外科医への受診をおすすめします。
寝違えた直後にやってはいけないこと!
首の可動範囲を確認しようと、首を前後左右に強く倒してみたり、みだりに動かすのは良くありません。寝違えは炎症、つまりケガです。なるべく動かさない、触らないようにしてください。痛みや違和感を治そうと、首のストレッチをしたりマッサージするのもNGです。
また、アイスパックや氷のうを使って長時間冷やすのもおすすめできません。 アイシングをすると、一時的な鎮痛効果は得られます(長くても一時間程度の冷却)。一方で、筋肉の血流が悪化するため、損傷部位の回復が遅くなる可能性も考えられます。また、筋肉ではなく靭帯や神経を傷めている場合は、炎症が首の奥深い部分にあるので、アイシングしても鎮痛効果が期待できません。
このほか、炎症を起こした直後は温めるのも良くありません。患部は熱を持っているため、温めると炎症を助長させてしまう可能性があります。温湿布やカイロを使って温めるのはもちろん、直後に湯船につかるのも避けたほうがいいでしょう。
寝違えた直後は一時的に冷やすのはOKですが、長期的に冷やすのはNG!
温めるのは、痛みが治まる安定期までNGと覚えておきましょう!
寝違えを早く治す方法はある?治し方の基礎知識(治るまでの日数の目安は?)
筋肉に炎症がある場合
炎症が筋膜に生じているとき・・・4日~1週間程度
筋肉の中心に生じているとき・・・3日~5日程度
神経痛の場合・・・2日~3日程度
ねんざの場合・・・1週間~2週間程度
寝違えの痛みを早く治すためのポイントとは?
初期段階は、とにかく安静にしましょう。
痛いと感じる動作は避けてください。傷ついた組織を修復するためには、これ以上の治療はないとも言えます。痛みが和らぐ安定期に入ったら、血流を促進できるよう対策をとり、回復を促しましょう。
血流改善には温める・ストレッチをする・マッサージをするなどいろいろな方法があります。どの方法が適切かは病態によって異なるため、受診した近医から引き続き助言をもらいましょう。
どうしても痛みが強く耐えられないときは?
首の痛みが強くて辛いときは、身の回りにあるタオルやマフラーを首の周りに巻き、あご置き・顎の支えのような物を作ると楽になります。あごを安定させることが目的なので首が苦しくなるほどきつく巻く必要はありません。
仕事の都合などで首にタオルやマフラーを巻くのが難しい場合は、腰にコルセットをつけるのがおすすめです。腰にコルセットをすると背骨がまっすぐ伸びるので、首周りの筋肉に負担がかかりにくくなります。近医を受診した場合には頸椎用のカラー(首用のコルセットのような物)が処方されることもあります。
寝違えてしまったとき病院には行くべき?
極端な話ですが寝違えは放っておいても、いずれは治ります。できるだけ早く治したいというのであれば、整形外科医や整骨院などの専門を受診するといいでしょう。
ただし、あまりに頻繁に寝違えを起こしているようであれば、一度検査とちゃんとした治療を受けることをおすすめします。首の骨が本来あるべき位置からずれていて(いわゆるストレートネックなど)首周りの筋肉を日常的に圧迫している可能性もあるからです。
寝違えに効果的な予防法や良い習慣をご紹介!
寝違えの原因は、前の説明にもあったように睡眠時に作られます。つまり予防のためには生活習慣や就寝環境の改善が要になります。
1.ゆっくり湯船につかる
筋肉がコリなどで硬くなっていると寝違えを起こしやすくなるため、毎日入浴の際、湯船に浸かって身体を温めることは、寝違えの予防になります。またポイントとしてはぬる目のお湯にゆっくり浸かること(38度程度のお湯に約20分~30分ほど浸かる)です。同時に副交感神経を優位に働かせることができ、リラックス効果も得られるでしょう。一方で、痛みが強い場合や炎症が悪化している場合は、湯船に浸かったり、ストレッチをすると状態を悪化させてしまう可能性があるので、出来るだけ避けましょう。
2.適度に寝返りが打てるよう寝具を整える
ある一説では、寝相の良い人は寝違えやすいと言われています。寝相の良い方は就寝中に姿勢があまり変わっていない可能性が高く、筋肉・血流がコリ固まりやすいからです。就寝時の姿勢と起床時の姿勢があまり変わらない方・寝相が良いと人から言われる方は、自然な寝返りを促す就寝環境を作るようにしましょう。例でいうと、マットレスは硬めのものがおすすめです。低反発や柔らかい素材は寝返りが打ちにくくなるので避けましょう。
3.首に負担がかからない高さの枕をつかう
枕は頭が本来あるべき位置(肩幅や首に対して正中の位置)に来る高さのものを使いましょう。あまり寝返りを打たない人でも、枕の位置を正しくセッティングするだけで寝違えのリスクは随分減ります。市販の枕ではなく、自分頚部の形に合ったオリジナルの枕を作ってくれるお店もありますので、一度訪れてみるのもおすすめです。
4.寒い環境で寝るのは避ける
寒い環境で寝ると、血流悪化・筋肉硬直しやすくなります。冬場はもちろん、夏場もクーラーで冷やしすぎないよう注意しましょう。
5.泥酔状態や過度に疲れた状態で寝るのは避ける
お酒を飲んだ後は寝違えが起こりやすいといわれています。その理由は2つあります。
ひとつは筋肉内の血流が低下しやすくなること。もうひとつは酔っていると感覚が鈍くなるため、寝返りの回数が激減することです。また、過度に疲れているときにも、お酒を飲んだときと同じことが起きやすくなります。飲酒後やいつもより疲れているときは、寝る前に経口補水液などでミネラル分を補給するのがおすすめです。ミネラル分摂取は血流の低下を防ぎ、寝違えの予防につながります。
いかがでしたでしょうか?
今、寝違えが発生している方、または明日起こるかもしれない寝違えによる頚部の痛み。今回、症状の出方や原因、その対策や生活での予防法などについて細かく解説させていただきました。身近に起こってしまう寝違え対策や今ある痛みが少しでも改善するよう、役に立つ情報になればと思っております。