
若いころは親が四十肩、五十肩に悩まされていた・・・。その年代の方は、原因不明の肩の痛みを感じている・・・。生涯で一度は耳にする疼痛ワードではないでしょうか。今までは何となく聞き流していたけど・・・そんな名前の病名があるの?と思いませんでしたか?今回は四十肩、五十肩に関する疑問を解決するべく解説や対策について深堀りしていきたいと思います!
四十肩、五十肩とは?
四十肩、五十肩は40代、50代に多い症状であることから名づけられた通称で、正式には肩関節周囲炎という病名の関節痛の一種です。その名の通り40代で症状が出れば四十肩、50代で症状が出れば五十肩と呼んでおり、それぞれに大きな違いはないとされています。
四十肩、五十肩は加齢によるものが最も多く、特徴として肩をあげたり水平に保つ動作が難しくなります。そのため洗濯物が干しづらくなった、肩よりも上のものが取りづらくなった、背中のファスナーがあげられない、などの症状が現れます。
よく肩こりと混同されてしまいがちですが、肩こりは筋肉の緊張などから起こるもので四十肩、五十肩とは明らかに原因が異なるものです。肩を動かした時に痛みが出たり、腕を後方に回せない、なかなか肩があげられない、などの症状がある場合は悪化してしまう前に何かしらの対処をしていく必要があります。
四十肩、五十肩の原因とは?
肩関節はいろいろな方向に動く関節であり、3軸性の動きを可能にしています。上腕骨や肩甲骨からなる肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)の形状から球関節(きゅうかんせつ)という関節に分類されています。
肩甲骨と腕の骨をつなぐ筋肉である腱板(けんばん)や腱板を囲む滑液包(かつえきほう)関節包(かんせつほう)などの様々な組織が正常に働くことで、肩や腕を動かすことができます。
しかし老化に伴い、筋肉や腱の柔軟性が失われたり、腱板周囲の組織に炎症が起こる(肩関節にある腱板という部位は毎日絶えず使い続けている組織で、年齢とともに次第に目には見えない傷ができてしまう。その小さな傷が何かの拍子で炎症を起こし症状が出てしまう)と腕が痛くなり腕が上がらなくなる、などの症状が出てきてしまいます。
長年の間に腱板やその周囲の組織にダメージが少しずつ蓄積し、無理な動作や姿勢が引き金となって症状が突然出てくると考えられています。
また四十肩、五十肩は腱板周囲に炎症が及ぶ病態であるのに対し、60代以降は腱板自体が擦り切れて炎症が起こるという病態が多い傾向があります。年齢によって病態は異なりますが、いずれのケースも現れる症状はほとんど同様のものです。
四十肩、五十肩の症状とは?
どんな時に痛みがでるのか?
四十肩、五十肩は肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩関節に痛みがでます。そのため、腕を持ちあげるような動きが難しく、中でも腕を外側に回すような動作などは特に痛みを感じます。
また四十肩、五十肩は寝返りをした時にズキズキ痛む、痛みで目が覚めてしまうなど、夜間に症状が強くなるのが特徴です。患者は腕の動きが悪くなる、腕がまったく上がらない、など腕に感じる症状を訴えることが多く、横に腕を上げたり背中に手を伸ばしたりすることができません。日常生活ではズボンの着脱や髪の毛の手入れがうまくできないなどの支障が出てしまうこともあります。
その他、疼痛が出現すると考えられる生活場面・・・
髪を後ろに束ねるときやシャンプーをするとき
電車でつり革をつかむとき
洋服を着替えるときやエプロンの紐を結ぶとき
洗濯物を干すときや歯を磨くとき・・・などなど
ただ「痛みがある」というだけではなく、いつもの簡単な動作が困難になり日常生活に不便を感じる方もいます。
痛みの時期や経過に応じた症状の状態とは?
四十肩、五十肩は痛みの強い「急性期」、
痛みは落ち着いているが思うように肩が動かせない「慢性期」、
痛みが改善する「回復期」に分けられほとんどの場合、経過と共に痛みは改善していくとされています。
急性期
1.鈍痛
肩のあたりが重苦しい感じ
肩の関節がピリッと痛む
↓
2.感覚異常
肩周りの感覚が鈍くなってくる
腕に違和感を感じる
首や肩のあたりに張りを感じる
↓
3.疼痛
ズキズキと、うずくような痛みがある
肩を動かす際に痛みを感じる
朝晩に痛みが強くなってくる
↓
4.夜間時痛、安静時痛
動いても痛いし、何もしなくても痛い
夜寝る時に痛みがあり寝つけない、痛みで目が覚める
慢性期
・夜間時痛、安静時痛は軽くなる
・過度に動かしたときに、強いつっぱり感がある
・急性期の痛みにより、動かさない状態が続くことで関節が硬くなり、動かせる範囲が狭くなる
回復期
・徐々に痛みが改善し、動かせる範囲も広くなる
・動かしても痛みが出なくなる
四十肩、五十肩と肩こりの違いは?
簡単に説明すると肩こりは「筋肉疲労」、四十肩や五十肩は「炎症」の状態です。
一般的な肩こりは筋肉の緊張からくる、血液循環の悪化が原因。習慣化した姿勢の悪さや運動不足、ストレスにより筋肉疲労がおこり、張りや痛みを引き起こします。
一方で四十肩、五十肩は老化などにより肩関節をとりまく関節包や腱板に炎症が起こる事で痛みが生じると言われています。その為年齢の若い方より、中年以降に発症する事が多いのです。
また肩こりと四十肩、五十肩では対処の仕方が異なる場合があります。誤った判断で痛みを悪化させることのないよう正しい診断の元、適切な対処をすることが非常に大切です。
四十肩、五十肩の治療法とは?
痛い時には無理して動かさない
痛い時に無理をして動かすと悪化してしまう可能性が高くなります。それは足を捻挫した時に無理をして走るような傷に塩を塗る行為です。無理をすると痛みが強くなったり長引いたりすることもあるので、まずは安静を心がけましょう。
四十肩、五十肩は安静を保っていれば自然に炎症が収まり痛みが引くことがほとんどです。症状の出方はその日の天候や体調によっても変わり、治癒する期間に関しても個人差がありますが一進一退しながら完治していきます。
痛みが長引く方で1~2年ほど治癒に時間がかかる方もおられます。いずれにしても何かのきっかけで急に治るものではありませんから、焦らずゆっくり経過を見ていきましょう。
四十肩、五十肩はきちんと対処すれば必ず良くなるものです。ただ安静にしていてもなかなか治らない、強い痛みを和らげたいという場合には治療も選択肢の一つです。
まずは痛みをとることが先決四十肩、五十肩は老化が原因の疾患であり、老化によって起こった腱板やその周囲の組織のダメージを元通りに修復することはできません。
ですので、四十肩、五十肩の治療は腱板や周囲組織の炎症が収まるのを待ちながら、今あるつらい症状を和らげることに注力します。治療の基本は薬物療法とリハビリテーションです。
肩の治療に関するリハビリテーションとは?
運動療法
四十肩、五十肩の治療法としては、運動療法をメインにしたリハビリテーションを行います。痛みが生じている部位やその周囲の筋肉・関節のストレッチや振り子運動は肩関節の緊張をほぐし、痛みの緩和と関節の可動域を広げる事が期待できます。
四十肩、五十肩はどちらか一方に発症する事が多いので、痛みのない側の予防策としても、日々かるめの運動を取り入れていく事が望ましいです。
温熱療法
患部の血行を良くすることで、治癒を促し痛みの緩和が期待できます。
一般に医療機関で行う温熱療法はホットパックやマイクロ波といった機器を使った治療がありますが、自宅では入浴や蒸しタオル、温湿布などを使い温める方法があります。
ただ、温湿布は人によって皮膚かぶれを起こすことがある為、長時間同じ場所に貼る事は避け、入浴後は30分以上空けてから貼り直すことでかぶれを防ぐことができます。
また疼痛が激しく、急性期にあたる時期の場合は温熱治療が適さない場合もあります。痛みが強い場合は迷わず専門医の診断や時期に応じた正しい治療法を確認するようにしましょう。
寒冷療法
四十肩、五十肩で痛みが激しく熱を持っているような場合には、炎症を抑える寒冷療法を行います。これはアイスパックなどを使うのですが、準備に時間がかかったり、凍傷を起こす可能性もある為、自宅での対処法としてはあまり一般的ではありません。
そのような場合は冷湿布を使いましょう。ただ、長い時間冷やし続けてしまうと筋肉が硬くなりますので、痛みが軽くなったら温湿布に切り替え血行を良くするよう工夫しましょう。
四十肩、五十肩の夜間痛の緩和と寝方のコツについて!!
1.高さ(肩の位置)を調整する
バスタオルや枕を使い、肩の高さを補います(市販のクッションでも可)。
肩の後ろから肘にかけて足し、支えを作り安定させましょう。
2.痛い方を上にして横向きに寝る
肩の関節は体の内側に向いている方が楽になりますので、横向きに寝るのも対処法の1つです。横向きになるときは肩が押し下げられないよう高さを保つための抱き枕や、丸めた毛布などを使用すると良いでしょう。
3.枕は高すぎず、低すぎず
枕が高すぎると首や肩周りの筋肉を引き伸ばし、痛みが出る可能性があります。逆に低すぎると首や肩周りの緊張を高めてしまうため肩に負担がかかります。そういった場合には枕から上半身、下半身にかけて傾斜をつけると、首から肩への負担も緩和されます。
ちょっとした工夫で就寝時の肩関節にかかる負担を減らすことができ、夜間痛の緩和と質の良い睡眠がとれるようになります。自分にあった寝具の調整を心がけてみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、加齢に伴って次第に生じる可能性が高くなる四十肩、五十肩についての原因や症状、対処法を交えて説明させて頂きました。
肩という器官は人間が生活や様々な作業をしていく上で必要不可欠である重要な機能を担う一部であり、痛みは誰もが生じたくないものでもあります。また40代50代ともあれば男女関係なく職場でも重要な立場と役割を持つことが多くなる年代であり、社会的にも支障を来したくない時期(年代)でもあります。
しっかり原因や対処法を学び、日頃から肩のケアを行ったり痛みが出現した時に正しい対処を行い、健康的なライフワークに繋げることが出来ればと思います。